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巨悪に立ち向かう小市民のかっこよさよ。伊坂幸太郎「ゴールデンスランバー」感想

 どうも。ビートルズ大好き、もぐらです。
 
久しぶりに傑作と呼べる作品に出会えたので紹介させてください。
 
その作品とは、伊坂幸太郎の集大成として評判高い「ゴールデンスランバー」のこと。本格的に紹介する前に簡単に説明すると、ゴルスラはかっぱえびせんみたいな小説でした。読みだしたらやめられないとまらないという意味です。
 
ホント、最高でした。
 
というわけで、ネタバレは極力回避しつつ、以下にゴルスラの感想を詳しく書いていきたいと思います
 

ゴールデンスランバーとは?

衆人環視の中、首相が爆殺された。そして犯人は俺だと報道されている。なぜだ? 何が起こっているんだ? 俺はやっていない――。首相暗殺の濡れ衣をきせられ、巨大な陰謀に包囲された青年・青柳雅春。暴力も辞さぬ追手集団からの、孤独な必死の逃走。行く手に見え隠れする謎の人物達。運命の鍵を握る古い記憶の断片とビートルズのメロディ。スリル炸裂超弩級エンタテインメント巨編。(Amazonより)
 
突飛な設定ほど、読者の好奇心を刺激するものはない。そういう意味では同作品も魅力的な設定を読者に提供してくれています。なぜなら首相暗殺の濡れ衣を着せられるという設定は読む前から大いに関心を引いてくれますし、と同時に、結末はどうなるんだろう?という期待感も煽ってくれるからです。引きとしては最高にいい。
 
加えて「ゴールデンスランバー」の凄いところは、読者の好奇心をビンビンに刺激しつつも、伏線をしっかり張り、ちゃんと回収している所。ここしかない!というタイミングで張り巡らされた謎を回収していくので、カタルシスを感じる人も少なくはないでしょう。
 
スピード感、スリル、ミステリー要素、それらが万遍なく散りばめられた小説。それが「ゴールデンスランバー」なのです。
 
※ちなみにゴールデンスランバーとは、ビートルズの楽曲のこと。黄金のまどろみ、子守歌みたいな意味合いで使われることが多いそう。ノルウェイの森みたいに、作者がビートルズが好きだからタイトルに使ったんだと僕は解釈しています。
 

スピード感あふれる逃走劇

前述したように、ゴルスラの魅力の一つは、主人公が警察から逃げるシーンにあります。というより全体のほとんどのシーンを逃走シーンに使っているので、そこが面白くなかったらそもそもこの小説を紹介していません。
 
で、その肝心の主人公が警察もとい何か大きな力から逃げているシーンに使ってある作中での期間、実はたったの2日弱しかないんですよ。その2日弱の出来事を4、500ページにわたり描いているというからスラムダンクを書いた井上雄彦先生もびっくりでしょう(スラムダンクは連載6年で4か月分の話なので)。濃縮具合が半端じゃない
 
しかしだからこそ緊迫した状況を作り出し、ページの無駄使いを防いでいるのも事実。裏を返せば、2日弱しか時間を使えないゆえに物語には緊張感が生まれ、差し迫った状況を創り出せています。
 
これが1年におよぶ逃走劇ならこうはいかないでしょうね。なぜなら1年という期間があれば主人公が選択する行動が大きく変わってくるから。首相暗殺の濡れ衣という特殊な設定を生かすにはやはり、短期間に決着させることによってスピード感を持たせることが最善かつ最も迫力があるシーンを展開する条件なわけです。
 
そしてさらに、この日数設定はスピード感を生むという以外にも物語に効果的な作用をもたらしてくれています。その作用とはつまり、日数が少ないので必然的に無駄なシーンが削られるということです。この設定だと情報を効果的に詰め込んでいくしかないので、短編小説さながら、本書には助長だなと感じる場面がほとんどありません。必要なところに必要な情報があって、必要に応じて読者に明かされるみたいな感じ。これも短い期間に物語を集約させた結果、といえるのではないでしょうか。
 
日数のことばかり取り上げていますが、もちろん作者の描写がうまいということも大きな要因の一つです。
 
というわけで以上の2点が、僕の考える「ゴールデンスランバー」の魅力、スピード感を生んでいる要因だと思います。
あと強いて言えばその短い期間に主人公が事件を通して成長していくさまも見所の一つですかね。それこそ桜木花道のように急激に成長する姿が見れるでしょう。
 

登場人物が漏れなくカッコいい

同作品もう一つの魅力は、キャラがどいつもこいつも漏れなくカッコいいということが挙げられます。全員の魅力を語るとさすがに長くなってしまうので、3人だけ掻い摘んで紹介しますけど、この3人はゴルスラの中でも特に好きなキャラです。
 
青柳雅春
物語の主役。元宅配ドライバー
「人間にとって最大の武器は笑うこと」と、作中でちらっとだけ言ってた気がしますけど、まさにこの人の本質を端的に表している言葉だと思います。
青柳雅春の性格は、好人物で人に優しく、決して首相暗殺を企てるような人間ではありません。THE普通の人といったような描き方をされていますが、決めるときにはメッシばりに得点を決めてくれる。そんなキャラです。
 
森田森吾
主人公の学生時代の友人。
「人間にとって最大の武器は習慣と信頼だ」というのが口癖で、本質的にそういう要素を持ったキャラです。
常態的には、名前に森という字が2つあることから、「俺には森の声が聞こえるんだ」というような冗談ばかりいつも嘯いていますが、非常時にはめちゃくちゃ頼りがいのある信頼に足る人物です。
主人公にとっては最も大きな存在で、物語の中でも大きな役割を持っているキャラです。
 
三浦
「人間にとって最大の武器は思い切りの良さ」と、作中で三浦は言います。そして前者2名同様、そこに三浦の本質がある気がします。
性格は掴みどころのない感じで子供っぽさが残る印象。
三浦の立ち位置をどう解釈するかは難しいでしょうけど、本作のキーパーソンであることは間違いありませんね。
 
というわけで、ざっくりとですが作中の魅力的なキャラを紹介させてもらいました。他にも樋口晴子やカズなどゴルスラには魅力的なキャラがたくさん出てきますので、興味がある方は是非読んで確認してみて下さい。
 
感想というか、考察は以上です。
「ゴールデンスランバー」の魅力が少しでも伝わってくれていたらこれ幸い。
 

 伊坂幸太郎作品に対する見え方が変わった

 
この作品を読んで僕の中で、伊坂幸太郎作品に対する印象はガラリと変わりました。正直ゴルスラ読むまでは、なんかイマイチパッとしないけどセンスだけはある作家さんだなあってくらいにしか感じてなかったんですけど、これを読んだら才能を認めないわけにはいかないです。ていうかもう虜と言ってもいいかもしれない笑
 
ちなみに今まで読んできたのは、グラスホッパーとアヒルと鴨のコインロッカーと陽気なギャングが世界を周すの有名どころ4作品。
 
いやまあ当然、この4作も突出して良いところはあります。セリフ回しが洒落てるとか伏線の張り方が上手いとか。でもいかんせん中途半端な印象を持ったのも事実で、垢ぬけない感は否めなかった。この子ああしたらもっと美人になりそうなのに、みたいなダイヤの原石を見てる感じ。
 
それがゴルスラでいきなり開花して美人になってるんだから、そりゃ惚れますよ。ギャップなんちゃらってやつ。
 
もしかしたら発表した順番は逆かもしれませんが、「ゴールデンスランバー」は伊坂幸太郎の集大成と呼んでも差し支えない程の作品であることは間違いないでしょう。
少なくとも僕の中では、作家自身の評価を変えざるをえないくらいの作品でした。皆さんも機会があれば是非手に取ってみて下さい。
 
ホント最高だった。

 

ゴールデンスランバー (新潮文庫)

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